タイで起業・会社設立するには!注意点も

Yumiko Kijima

近年著しい経済成長を見せているタイ。日本と地理的にも文化的にも近く、日本からのビジネス進出が目立っています。

この記事では、タイで会社を設立する方法を解説します。個人で起業する人も、日本の法人としてタイに進出を考えている人も、ぜひ参考にしてみてください。

タイで会社を設立するとなると、日本からの資金送金が必要になってきます。日本の銀行と比べ最大14倍安く海外送金ができるWise(ワイズ)についても紹介します。

目次🔖

タイ会社設立のメリットとは

タイは東南アジアの中でも中心に位置していることから、物流の拠点としてビジネス進出に最適です。ゴム製品を中心に製造業が発達していますが、近年は観光やサービス業界も急速に発展しています。

タイは地理的に日本に近いだけでなく、仏教国として文化にも共通点が多く、日本との交流が深い国です。日系企業が多く、また日本からの観光客も年々増えています。強力な日本人コミュニティがあることから、日本人にとって進出しやすい国となっています。

すでに日本からタイとビジネスを行っている人も多いでしょう。わざわざタイに現地法人を設立することには、次のようなメリットがあります。

  • タイ国内で営利活動ができる
  • タイに長期的に滞在し、働くためのビザが取得できる
  • タイ国内で資産を所有することができる(条件付き)
  • タイ国内での社会的信用がでる

特に大きいのは、タイ国内で営業や販売などを行えるようになることです。日本法人の駐在員事務所を設立する進出方法もありますが、この場合は営利活動が禁止されています。タイ市場を対象にしたビジネスを展開するなら、現地法人設立が最適です。

タイの会社の種類

タイに進出する場合、考えられる形態として

  1. 日本の企業としてタイに支店・駐在員事務所を設立
  2. GEO(海外雇用代行、Global Employment Outsourcing)
  3. タイで新しく法人設立

の3種類が挙げられます。日本の会社の支店や駐在員事務所は、行える事業の範囲が限られているため、法人設立前のタイでの市場調査などに利用されるケースが多いようです。

GEOは最近注目されている新たな進出形態です。自ら現地法人や支店を設立するのではなく、タイに既に存在するGEO会社を仲介する形で、タイにおいて事業を行う社員を雇うことができます。GEOはリスクが少なく、事業開始までの期間を短縮できるといったメリットがあります。

タイで社会的信用を得て本格的に事業を行うなら、やはり法人設立が最適です。しかし「最初は小規模で始めたい」などという場合は、GEOを検討してみても良いでしょう。

タイで設立できる会社の種類としては、次のものがあります。

有限責任会社(Limited Company)

有限責任会社は、日本でいう株式会社に相当します。日本資本がタイで企業を設立する際、有限責任会社を選択することが一般的です。公開会社と非公開会社の2種類があり、非公開会社のほうが規制が柔軟です。

タイでは業種によって外資の参入に関わる規定が異なり、多くの業種は外資100%での会社設立ができません。つまり、タイ国籍者の出資が必要です。タイに登記されている日系企業の多くは、タイ資本51%日本資本49%の日タイ合弁会社となっています。¹

パートナーシップ(共同事業体、Partnership)

ビジネスにおけるパートナーシップは、「利益を得る目的で共同事業体を形成するための契約」と定義されており、日本の持分会社のような形態を指します。しかし、パートナーシップはメリットが少ないと言われており、あまり利用されていない法人形態です。


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「海外送金と言えば、銀行」という人も多いかもしれません。しかし、銀行での海外送金は高い送金手数料だけではなく、為替手数料と呼ばれる手数料を含む独自の為替レートが使用されることが多く、コストがかさみがちです。

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タイの会社設立・起業する手続き方法

ここからは、タイで最も一般的な会社の形態である有限責任会社の設立方法を詳しく見ていきましょう。

インターネット手続きと通常手続きの2種類がありますが、インターネット手続きはタイ語のみとなっています。また、外国企業の登記にはまだ十分に対応していないため、窓口を通じて手続きを行う方が無難です。²

内容かかる時間
1. 事前準備(規制の確認や書類の準備など)1か月程度
2. 商号(会社名)の予約2~3日
3. 基本定款の作成・登記1週間以内
4. 設立総会の開催1日
5. 最終登記1日
6. 事後手続き(税務登録や銀行口座の開設など)1~3か月

1. 事前準備

タイでの会社設立の行政手続き自体は、比較的簡単です。しかし、業種によって外資参入の規制が細かく定められているため、これらを確認し、規定に沿った形で起業するための準備が最も大変な工程であるといえます。規制業種の種類が多く、定義も曖昧であるため、しっかりと理解するまでに時間がかかることがあります。³

タイの外資規制は、日本貿易振興機構(ジェトロ)のページで確認できます。基本的に、外資50%以上の企業の設立は、商務省による特別な許可またはBOI奨励取得が必要です。

BOI(タイ投資奨励委員会、Board Of Investment)によりタイに有益な投資であると認められる場合、BOIの許可を得て日本独資で企業設立が可能になります。ただし、BOI奨励の取得には数ヶ月の時間がかかること、またBOIによる規制(輸入課徴金の設定や輸入制限など)の対象になることに注意しましょう。¹

本社となるオフィス物件の賃貸契約も、登記前に行います。また、必要書類を準備・翻訳する作業も必要になるため、十分な時間を見積もっておくことが重要です。必要書類については後ほど解説しています。

2. 商号の予約

次に、商号(会社名)を管轄の商務省登録局に予約申請し、類似商号がないか、または禁止されている商号でないかを確認します。問題がなければ、2〜3日程度(オンラインなら即日)で新会社の名前として利用する許可を取得することができます。

商号の予約は30日間有効で、その期間内に最終登記を行わなければいけません。30日経過すると予約は無効となり、改めて申請する必要があります。

商号の予約が取れたら、これから必要となる会社印の作成を行うことがおすすめです。

3. 基本定款の作成・登記

会社設立の事務手続きの中で、最も重要なのが基本定款の登記です。基本定款には、次の内容を記載します。

  • 会社名
  • 登記資本金
  • 発行株式数
  • 1株当たりの額面価額(100バーツまたは1,000バーツが多い)
  • 設立目的
  • 発起人(3名以上)の氏名、住所、職業、国籍、署名および各人が出資する株式数
  • 登記した会社事務所が所在する県名
  • 取締役の負う責任

上記の内容をもれなく記載し、3人以上が署名した基本定款を、インターネットまたは管轄当局において登記します。登記料は以下の通り。

項目金額
基本の登記料500バーツ
インターネット上の登記350バーツ(2023年12月31日まで)
定経済開発区内に本社を有する会社の登記250バーツ(2023年12月31日まで)

基本定款の登記が済んだら、株式を発行することができるようになります。

4. 設立総会の開催

次に、設立総会を開催する必要があります。総会では次の内容を検討し、承認を得る必要があります。

  • 付属定款の採択(株主総会・取締役会などの会社の規定)
  • 発起人の設立準備行為に関する承認
  • 当初の取締役の選任と権限の取り決め
  • 監査人(※)の選任
  • 株式引受人の氏名、地位、住所、引受株式数等のリストの承認
  • 株式対価の支払

※タイでは会社の規模を問わず、すべての会社に対して監査人による監査義務が課せられます。この監査人はタイ人の公認会計士である必要があり、氏名および免許番号の報告が義務付けられています。

5. 最終登記

設立総会を開催してから3か月以内に最終登記を行い、会社の設立手続きは完了です。登記局に支払う登記料は5,000バーツとなっています。

登記申請には、設立総会の決定に従い、次の事項を含める必要があります。

  • 株主氏名、住所、職業、国籍、持株数(株主は、常時最低3人必要)
  • 取締役および代表取締役の氏名、住所、職業
  • 代表取締役の代表権(サイン権)の形態(単独署名か共同署名か)および署名
  • 本社および会社の各支所の住所
  • 付属定款(株主総会、取締役会などに関する会社規則)
  • 株式により受領した初回資本金払込総額(※)

※取締役は、就任したら直ちに株式に対する金銭の支払いを最低25%要求する必要があります。これが初回資本金払込総額です。外国人の投資による労働許可の条件を満たすには、この払込金額が1人につき最低200万バーツである必要があります。また、BOI認可企業は、生産開始までに登録資本の100%の振込が条件となっているので注意が必要です。

また、登録資本が500万バーツを超える会社は、次のものが追加で必要です。

  • サイン権を有する取締役が資本金払込額、設立のための申請書を受領したことの商業銀行による証明書(登記日に提出)
  • 実際に振り込まれた資本金額に基づき、資本金が株主から当該サイン権を有する取締役により集められ、会社に振り込まれたことの証拠として、商業銀行による証明書(会社登記の日から15日以内に提出)
  • 現物出資の場合(不動産または正式な所有権の登録のある資産)には、会社は、自身がその資産の所有者になったことを証明する証拠(会社登記の日から90日以内に提出)
  • 他の資産による現物出資の場合には、会社は出資のために供される資産の価格を示した資産リスト(会社登記の日から90日以内に提出)

6. 事後手続き

最終登記によって会社の設立プロセスは完了します。しかし、実際に業務を開始するまでには、あと数ステップの手続きが必要です。

まず、登記日より60日以内に歳入局でタックスID番号 (納税者番号)の申請を行います。そしてVAT(付加価値税)の支払いに必要な税務登録が義務付けられています。⁴

その後、タイで合法的に滞在しビジネスを行うために、就労ビザと労働許可の取得を行います。観光ビザでの入国では労働許可を得ることができないため、まずはノン・イミグラントビザを取得して入国し、労働許可の取得申請を入国後直ちに行います。労働許可取得の条件などに関しては、日本貿易振興機構(ジェトロ)のページで確認できます。

労働許可を取得できたら、タイの銀行口座を開設しましょう。ビジネスを行うにあたって、現地の法人口座は欠かせません。口座開設に関しては、後ほどより詳しく解説しています。

タイの会社設立・起業に必要な書類

タイで会社を設立するにあたって、様々な書類を用意しなければいけません。公証役場で公証を取り、翻訳を付けた書類を在日タイ大使館・領事館で認証を受けて、初めて現地で正式な書類として受け付けてもらえます。

必要となる書類は業種や必要となる認可申請の種類などによって異なります。以下では、最も基本的なものをリストアップしました。

  • 会社所在地となる物件の賃貸契約書
  • 発起人3人以上の身元確認書類(パスポートなど)
  • 会社の基本定款
  • 資本金を証明するもの
  • 監査人として任命したタイ人公認会計士の身分証明書類
  • 会社印

タイの会社設立にかかる費用・資本金

タイで会社を設立するにあたって、考えなければいけないのが費用です。タイ資本が過半数を超える企業の場合、最低資本金に関する規定はありません。しかし、100万バーツ以下だと審査に通りにくいと言われています。

外資がマジョリティの場合は、最低200万バーツ(場合によっては300万バーツ)の資本金が必要です。¹

会社の種類最低資本金の規定日本円
タイ資本50%以上なし (100万バーツ以上が◎)なし(約365万円以上が◎)
外資50%以上200万バーツ約730万円
外資50%以上(特別な認可が必要な業種)300万バーツ約1100万円

ただし、これに加えて労働許可を取得するためには、外国人労働者1人に対して最低200万バーツの払込済資本金(※)が必要です(BOI奨励企業を除く)。つまり、タイ現地で雇用したい人が多いほど、資本金も多く必要になります。例えば、日本人3名分の労働許可を取得したいと考えている場合、資本金は最低600万バーツでなければいけません。⁵

※最終登記を行う前に株式の対価として支払う金額のこと。全体の資本金の25%以上の額でなければならない。

資本金に加えて、会社の設立には行政手続きにかかる手数料が必要です。²

手続き手数料日本円
基本定款の登記250~500バーツ約914~1,828円
最終登記5,000バーツ約18,300円

これ以外にも、会社の住所となるスペースの賃貸料金や、会社印の作成費用、監査人を雇う費用などが発生することに注意しましょう。

タイで銀行口座を開設するには

会社の設立手続きが完了したら、タイでの銀行口座の解説が必要になります。銀行口座は商取引を行う上で欠かせないだけでなく、日本から資金を送金する際にも役立ちます。

銀行口座を開設するには、有効な労働許可を取得している必要があります。観光ビザでは口座開設はできないので注意しましょう。法人の資格でタイ国内で銀行口座を開設する場合は、以下の書類が必要です。⁶

  • 会社登記証明書
  • 基本定款
  • 社印登録証
  • 取締役会議事録(口座開設とサイン権者選任を決議したもの)
  • サイン権者のパスポート(外国人の場合)あるいは ID CARD(タイ人の場合)
  • 株主リスト

ただし、追加書類が求められることもあるので、銀行の担当者と相談することがおすすめです。バンコク銀行など大手の銀行は、日本語に対応している支店を持っていることがほとんどです。

タイの口座の開設についてより詳しくはタイで銀行口座を開設するには?手順・手数料を徹底解説!の記事を参考にしてみてください。

日本からタイへお得に海外送金:Wise(ワイズ)

タイで会社を設立するとなると、初期費用などを日本から送金する必要が出てくるかもしれません。「法人の海外送金と言えば銀行」と考えている人も多いのではないでしょうか?

しかし、銀行を利用した海外送金では、送金手数料が5,000円を超えることも珍しくありません。

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    まとめ

    ここまで、タイで起業する方法を見てきました。タイは外資に関する規制や奨励が複雑であるため、最適な進出形態を決めて資本金を確保するまでが大変です。また、特別な認可がない限りは、タイ資本が過半数を占めている必要があるため、信頼できるタイのパートナーを見つけることも重要です。

    実際の会社設立の行政手続きは比較的簡単に行えます。準備期間を含め、タイでの会社設立には6か月〜かかると見積もっておきましょう。心配な場合は、タイ法人設立の代行会社を利用しても良いかもしれませんね。

    スムーズに起業を済ませ、豊かな市場を誇るタイでビジネスを始められるとよいですね!


    ソース

    1. 外資に関する規制 | タイ - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ
    2. 外国企業の会社設立手続き・必要書類 | タイ - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ
    3. タイの法令・制度によるビジネス上の障害(その1) ジェトロ・バンコクセンター 助川 成也
    4. 税制 | タイ - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ
    5. 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用 | タイ - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ
    6. 日系企業向けサービス

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